研究・教育指導方針Policy

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本研究室を希望する皆さんへ

ここでは、大塚研(構造適合性デザイン研究室)での指導方針を示しています。PI(大塚)の研究履歴については、材料学会に寄稿した記事を参照ください。宮下研については指導教員にお尋ねください。

 

入試について

本研究室では、修士課程 工学課程/工学専攻 機械工学分野およびシステム安全工学専攻(令和6年度から工学専攻 システム安全工学分野に改組予定)、5年一貫制博士課程 技術科学イノベーション専攻、博士後期課程先端工学専攻から学生さんを受け入れています。

募集要項及び入試説明会については大学HPをご確認ください。
募集要項 入試説明会(システム安全工学)

 

研究室見学について

バイオマテリアルや医療機器に興味のある方であれば、現在の専門分野は関係なく活躍できると思います。PI(大塚)も全く別の分野からバイオマテリアル分野に参画しています。あんまり興味はないけどやってみようかなという方でも、研究の進め方を習得する点で、異分野融合型のバイオマテリアル分野は非常に有効です。研究室配属のための学内見学会については、担当より連絡があります。それ以外の機会でも説明が聞きたい方は大歓迎です。学外の方でも、ご連絡いただければオンライン研究室紹介や、研究室訪問を受け入れています(共同研究等の機密保持の観点から、見せられないものがあることはご了承ください)。お気軽に、お問い合わせからご連絡ください。

 

研究者(イノベータ)養成としての研究・教育システム

私達の研究室のモットーは、
「Build your practice. Be a glue.(実践を積み重ね、分野融合の“のり”になれる人材になろう)」です。


ここからは、研究をする意義をPIはどう考えているのか?ということをお話します。あくまでもPI(大塚)個人の意見であり、賛同できない方や、自分には合わないなという方もいらっしゃると思います。そのような方々とも、対話を通じて、システムに改善するべき点を見出し、研究を楽しむ灯し火を渡して行きたいと考えています。
内容が長いので、まとめると以下の通りです。関心のある方は、気が向いたときにでも、読んで頂ければありがたいです。
指導方針についてのよくある疑問点については、FAQにまとめましたので参照ください。内容について詳しく聞きたい、疑問のある方はお気軽にお問い合わせください。
 
  1. 研究とは、新しい知を生み出すことであり、その過程を自分で楽しむこと。
  2. イノベーション(=新たな仕事を生み出す)産業の1形態として研究室は存在する。
  3. イノベーションを生み出す人材育成のキーワードは、Customer-oriented「問題発見」、Liking knowledge with creation「問題解決のシステム化」、Fail and revise until success「やり抜く力(試行錯誤できる)」にある。
  4. 研究室での研究活動は、繰返し実習による実践能力の定着化である(例;自動車免許における路上教習)。進路に関係なく、専門職には不可欠である。
  5. 研究テーマは、新たな知を生み出すとともに、イノベーション人材育成に寄与する水準が求められる。学生さんが自身の興味と仮説を検証するのはぜひ挑戦してほしい。ただし、研究チームとして目標とするのは、Banting &MacleodのMacleodであり、Amano & Akasaki のAkasakiである。
  6. VITAE専門職育成モデルに沿った、Literacy(知識、知的能力)、Competency(個人の実践能力)、Management(研究マネジメント、研究公正)、Engagement(チームワーク、社会への貢献)をバランスよく身につけるための教育を実施。
標準的な日程は以下のとおりです。

学士課程


修士課程

 
 

指導方針を書こうと思ったきっかけ:研究チームの原点

これまで、PI(大塚)の中では試行錯誤しながら指導方針をまとめ、定期的に学生さんに伝えるようにしてきたつもりでした。しかし、研究が進展し、プロジェクトも拡大していくにつれ、心身を蝕んでいました。残念ながら、私は自分でそれに気づくことができませんでした。身内の不幸によって強制的に休養する機会を得て、初めてそれに気付かされました。今となっては、もう少し早く気付けていたら、と後悔しています。そして、気づかせてくれたのは親の最後の贈り物だと、感謝しています。

PIとしての業務が主となり、学生さんと一緒に実験できる時間も減っています。対話が大事だと学生さんに言う割に、一番対話していなかったのは自分ではないかとも反省しました。そのため、自身の考えは事前に伝え、それを採用するかどうかは学生さんが選んで良い、それが研究チームなのだということは、研究室に来る前から伝えるべきだと考えました。イノベーションを目指した問題解決のシステムを作り、試行錯誤しながら、その過程自体を皆で楽しむ、そのような研究チームを作るのが目標です。

私が赴任したのは2007年10月です。ようやく肩身のせまいポスドク生活から開放されると安堵していた私に、当時の指導教員は、「正直、今の貴方では3年早いと思う。でも頑張って。向こうの先生は良い先生だから。」と言いました。その意味は、着任してすぐに悟らざるを得ませんでした。様々なプロジェクトの下で、テーマを選ぶ必要のなく博士まで取ってしまった自分には、提案したテニュアトラックのプロジェクトを、学生さんがこなせるように問題分解することすら、未熟なためできなかったのです。力学やプログラム作成、論理展開についてはある程度知識はあったものの、実践的教育を受けてきた学生さんたちに相応しいテーマを、一緒に作り上げることができませんでした。そのため、半年間はひたすら現研究室の設備、取組、指導などを見て吸収しました。そして研究テーマ再編のため、弾性力学・破壊力学・材料強度学・転位論、そして生体材料学の教科書を古いものから読みふけりました。数カ月後、やったことはないが、多分できそうで、かつ新規性も狙える実験的なテーマを再構築しました。液中で疲労試験が実施できる装置を新たに導入し、試運転が終わったころ、新しい学生さんが配属されました。メンターの武藤先生の研究室の修士テーマに私のものを入れてもらい、共同指導という形で私に学生さんを配属してくれました。ご自身も多くのプロジェクトを抱え多忙を極めていたにも関わらず、私への教育のために、学生さんを配属してくださったことには、感謝の念に堪えません。

配属された学生さんは、口下手だが真面目で、頑固なところもあるが人の話を素直に聞く人でした。研究テーマを選んだ理由は単に他に行くところがなかったからだ、と言われました。正直がっかりはしましたが、気を取り直して、一緒に頑張っていこうと話しました。試験片を作っては壊れてほしくない掴み部で壊れ、弾性力学計算し、有限要素解析したのになんで?!と思いながら、4回は直しました。ようやく疲労試験が、しっかりしたアライメントで(アライメントの出し方のマニュアルは前研究室のものをコピペしました。)できるようになりました。力学モデルと実際の応力場がどう違うのか、その差をどう評価すべきかを痛感しました。液中で疲労き裂を光学顕微鏡で観察しようとしても、溶質による屈折率変化のせいで細かなき裂はまともに観察できず、途方に暮れました。学生さんと相談して、光学顕微鏡で観察しつつ、定期的に溶液を抜いてレプリカを取り、また溶液を戻すという、今では考えられない面倒な方法を取ることにしました。溶液による腐食効果が変わるため、試験は中断できず、100万回の試験は徹夜でした(観察して中断するため)。これを二人で交代して取りました。幸い、その頃にはき裂発生限界が見えていたため、500万回のときは、き裂が入らないことさえ確認すれば十分でした。

ようやく実験もできてきたし、修論のためには学会発表はしなきゃね、と、乗り気ではない学生さんをなかば強制的に、学会発表に行かせました。練習段階ではある程度話せていたのに、本番ではアガってしまいあまり伝わらず、文字通り学生さんと頭を抱えました。一緒に出ていた、同分野の偉い先生からは心配されました。

ですが、この学生さんは逃げませんでした。この頃には、実験は一人でこなし、電子顕微鏡観察しながら、き裂進展機構についても整理できるようになっていました。そして、明らかに既存の文献とは異なる、溶存ガスによるき裂進展加速機構と、組織の加工影響との関係を見出していました。ピースが揃い、メカニズムを説明できる図が描けてきました。学生さんの表情は、静かな自信に満ちるようになっていました。

修士論文の執筆は二人でなんとかこなし、修士論文発表会では、見違えるように立派に発表していました。他の学生さんに、軽口を叩く余裕もあったほどです。その学生さんの学部時代を知っている先生方からは、「彼には何があったんだ!?」とその成長ぶりを驚かれました。最終的には学会発表を3回実施し、修了して企業に就職しました。その後、その論文は私が引き継ぎ、日本語で出した後、英語の査読付き論文として公表しました。

その論文が出た頃、前指導教員から電話をもらいました。もう随分前に卒業したのにまだダメだしされるんか・・・と身構えて出た私に、前指導教員が告げたのは予想外の言葉でした「貴方がこの前出した論文について、色々聞きたいって方がいるよ。」。それに続いて言われた言葉は今でも覚えています「いい人を育てたね。と褒められたよ。」。 その後、その先生からは直接お電話を頂き、激励のお言葉を頂きました。

これが、私の初めての研究チームです。
時を経て、学生さんと一緒に実験をすることは限られた機会になりました。当時のやり方は現在では通用しませんし、その当時厳しいことを言っていたことを思い出して反省しています。当時の別のプロジェクトでは結局うまくは行かず、学生さんに苦労かけました。

この経験を踏まえて、学生さんの興味を引き出し、試行錯誤しながら前に進み、やり遂げることができるよう、サポートするのが教育なのだと、この当時自覚しました。そして、現在の情勢に合わせ、多様性とワーク・ライフ・バランスを確保し、その上で、成果を出し続けるためのシステム化、すなわち指導方針の再構築が必要だと考えました。

 

1.研究について

研究のイメージを一番伝えてくれるのはこの絵です。
私にとっての研究は、大学研究室や国研、企業研究所などの特別な場所でないとできないものではありません。ただ、ひたすら、わからないこと、知りたいことに思いを巡らします。そして、新しいことが自分にとって見えた、その時に無上の喜びを感じます。
 

2.イノベーション産業としての研究室

現代の大学研究室は、新たな知識・技術を創造するイノベーション産業の担い手として期待され、存在しています。工学系の研究室であっても、基礎学理の発見(Applied Science)から、活用(Engineering)、製品開発(Innovation)までを一貫して見渡すことのできる人材を育成する必要があります。なぜイノベーションが不可欠なのか、という点については、経済産業省「スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する」(2023年4月)に端的に説明されています。モットーである“技学”は、Science -Innovationに至る流れを的確に表現した、素晴らしい言葉だと思います。
 

3.研究・教育システムのキーワード

改めて、研究室のモットーである「Build your practice. Be a glue.(実践を積み重ね、分野融合の“のり”になれる人材になろう)」の意味するところをご説明します。イノベーションを生み出すためのキーワードは、以下の3つです。
 
  • Customer-oriented「問題発見」:技術シーズが先にあるのではない。解決すべき課題を設定して、それに必要な技術を極める。
  • Linking knowledge with creation「問題解決のシステム化」:一つの分野にとどまっていては、現実の複雑な課題は解決できない。現実を解決するには、既存の知識をどのように組み立てていけばよいか、問題解決の仕組みを作るべき。
  • Fail and revise until success「やり抜く力(試行錯誤できる)」: 多くの失敗をしたが、決断して修正することで前進できる(Steve Jobs、 1997)。失敗を積み重ねることができるかが成功への道である。

高度に専門分野が細分化された現在において、複数の分野を個人が習得することでは、現実の課題解決に必要な水準に到達することはできません。だからこそ、必要な専門分野群を抽出し、それを有する人材群(A、B、C)を組み合わせ、システム化する必要があります。つまり、自身の専門分野の深みと、複数の分野を課題解決に合わせて統合する訓練が必要です。そのために、異分野融合型の研究を実施しています。そして、個人の興味・関心がイノベーションのキーになっていないことに注意する必要があります。どんなに素晴らしい(と自分が思っている)技術であっても、消費者が受け入れてくれなければイノベーションにはならない。この冷徹な事実はうけいれて、研究を進める必要があります。
   

4.イノベータ育成のための研究活動

誤解されているのが、研究者志望でもないのになぜ研究しなければならないのか?という学生さんがいることがです。知識を定着させ、実践能力を育成するための繰返し実習として、研究活動は不可欠です。よく学生さんにたとえて言うのは、大学の課程は自動車免許教習所です。学位が免許証、講義は学科講習、研究活動は実践講習に相当しています。実践を繰返すことで、知識が定着し、興味・関心が湧いてくるのです。興味・関心があるから繰返す事ができるわけではありません(3日坊主)。エビングハウスの忘却曲線が示す通り、繰返すことで、知識を再活用しやすくなり、専門職としての業務が遂行できるようになります。だからこそ、専門職の育成過程には実践講習に関する必修科目が存在しています。前述の、イノベータ養成には不可欠です。

研究することが当然の環境にいる人は、繰返して実践していますので、知識と実践能力が習得できます。それが通常であり、その価値には気づいていません。研究している人は、その価値を自ら理解しているということに自信を持って良いです。強制されては、決してできることではありません。



 

5.イノベータ育成のための研究テーマ設定とその水準

学位が、運転免許証のようにどこに行っても通用するようにするためには、質の保証が求められます。多少の誤差はあっても、工学の学位を持った卒業生は、技学=イノベーションを理解し、問題発見・解決の枠組みを構築することができるという水準に到達することが必要です。そのために、研究テーマには以下の要件が必要です。
 
  • Customer-oriented「問題発見」:Funding(プロジェクト)。 科研費、戦略的創造研究推進事業、企業研究費など、その問題の解決に資源を投入する顧客が存在する。
  • Linking knowledge with creation「問題解決のシステム化」:Interdisciplinary(異分野融合) 指導教員のみでなく、他研究室、他大学など多くの人と関わり、問題解決のシステムを、指導教員と相談しながら構築していく。
  • Fail and revise until success「やり抜く力(試行錯誤できる)」:Presentation(成果報告)、問題解決のプロセスを、学会発表などを通じて社会に発信し、自身に自信をつけながら、試行錯誤を繰り返すことができる。

もちろん、理想的には、Customer-orientedとSelf-Curiosity が一致していることが望ましいです。ただ、そうではなくとも、イノベーションにつながるテーマを自身が見つけることができれば、一歩外に踏み出し、取り組んでみることが求められます。

危険なパターンとして、以下の2種類があります。
  1. 研究室の専門分野とはちょっと違っていても、自分はこのテーマがやりたい!というのがある。
  2. 研究自体に興味がなく、どんなテーマでもやりたくない。
2はともかく、1が危険な理由はわかりづらいかもしれません。1に決定的に欠けているのは、Customer-oriented「問題発見」の視点です。自身にとっては重要で、新しいと思うテーマでも、現代の情報化社会では、最低1000人は同じ仮説を持っている人がいるリスクは認識すべきです。残念ながら、特許・論文も、アイデアを最初に具現化した人を称賛し、保護する仕組みです。研究テーマの設定にも、戦略的な訓練が必要です。この点で多少は経験がある指導教員をうまく使ったほうが、最終的にはうまく収まると思います。

テーマ設定について
京都大名誉教授 篠本 滋 先生 大学院生に伝えたいこと

技術の習得で、何をどう行えば上達するかについて、古典にも多く指摘があります。

徒然草 第百五十段 (兼好法師)
未だ堅固かたほなるより、上手の中に交りて~終に上手の位に至り~
(どんな専門家でも、未熟な頃から、しっかりした先達の指導を受けながら努力することで、その専門家の領域に到達したという意味)

正法眼蔵随聞記 (道元)
人を恥づべくんば明眼の人を恥づべし
 “守破離”という言葉に集約される通り、専門職を目指す過程で、先達の指導は不可欠です。
現代の研究室に置き換えると、メンターとなる、知識・経験を有する人からよく吸収し、その後独立して実践することの重要性を示していると思います。

2.については、工学系を卒業した学位保持者として専門職を目指すにも関わらず、その知識を定着するための講習は受けたくないとみなされます。社会に出て専門職としての業務をこなすことができるか、疑念がわきます。医師免許を持っているが、病院実習したことないお医者さんに(現実には取れないのですが、非現実的な仮説として示しています)、診察を受けたいと思う患者さんがどの程度いるでしょうか?繰返して実践することに苦痛を感じるようであれば、早めに分野を変えたほうが良い気もします。この点も、指導教員とよく相談することが必要だと思います。

そうなると、研究テーマに学生さんの創意工夫の余地はないのか?という誤解を持つ方もいますが、そんな事は全くありません。「問題解決のシステム化」の過程で、指導教員も想定していなかった組み合わせを試してみようなどということは頻繁にあります。テーマを自分で発掘できないから独自性がないと誤解するかもしれません。しかし、イノベータは組み合わせを創造する人である以上、組み合わせを変えられた時点で十分称賛に値します。だからこそ、よく対話を重ねて進めていく必要があります。

「問題解決のシステム化」において、個人ではなく研究チームを作ることが重要です。その例として取り上げたいのが、2つのノーベル賞受賞例の対比です。
 
  • インシュリンの発見(ノーベル生理学・医学賞 1923年)Banding & Macleod
  • 青色LEDの開発(ノーベル物理学賞 2014年)Amano& Akasaki

どちらも、現代社会に不可欠な貢献をした発見であるのはいうまでもありません。しかし、問題解決のシステム化においては、全く異なる様相をみせます。
Banding & Macleodについては、インシュリンにつながる仮説を持った、熱意に溢れた青年Bandingが、トロント大学のMacleodを訪れたところから始まる、有名なストーリーがあります。Macleodに対しては、夏休みに研究室を貸しただけでノーベル賞を受賞したという誹謗中傷すらなされることがあります。しかし、インシュリンの分離までにつながる研究チームを構成するためBest やCollipを参画させ、実験方法についての指導を実は詳細に行っていたMacleodのシステム化における貢献は、決して過小評価されるべきではないと考えます。そして、システム化による貢献こそが、ノーベル賞に値すると考えます。
 
青色LEDについては、3人の受賞でありながらなぜ天野・赤崎ペアを取り上げるのか?という点は疑問に思われる方もいらっしゃると思います。それは、問題解決のシステム化の過程で、異分野での知見を取り込みながら、開発・展開に繋げた点が異なると、私が考えているからです。バッファー層の導入による格子不整合の緩和というアイデアは、材料力学・破壊力学を研究する人間にとっては、特異応力場の制御という観点で合理的に説明できます。しかし、解析・実験技術も限られた時代に、卓越した仮説を持ち、異分野の知見を吸収してシステム化し、仮説検証を繰返して到達した過程は、イノベーション教育と研究が、理想的に合致したものだと思います。
 
どちらも、受賞につながる成果はキャリアの早期にあげています。このことからも学生さんが研究初期に抱く疑問や仮説は、決して卑下する必要はなく、是非試してほしいと思っています。しかし、その成果を結実させるためには、Linking knowledge with creation「問題解決のシステム化」、研究チームの編成が不可欠だということを理解して、挑戦してほしいと思います。

 

6.教育システムについて

VITAE専門職育成モデルに沿った、Literacy(知識、知的能力)、Competency(個人の実践能力)、Management(研究マネジメント、研究公正)、Engagement(チームワーク、社会への貢献)をバランスよく身につけるための教育が必要です。専門研究を個人で進める弊害として、Literacy(知識、知的能力)さえ身につければよいと誤解することがあります。これは、先程のイノベーションの要素である、Linking knowledge with creation「問題解決のシステム化」ができない人材を育成するということになります。そのため、学生さんとは、年間研究計画を立てる際、この4要素について、どう習得するか?ということを考えてもらっています。
 
  • Literacy(知識、知的能力)については、これは材料力学・破壊力学をベースにした知識を実践できるように、段階的に学修することを計画します。
  • Competency(個人の実践能力)について、自身で実験・解析を行うことができるだけでなく、チームで活動するための取組を意識することを求めています。
  • Management(研究マネジメント、研究公正)について、研究データの全てについて、再現性を第3者に検証可能なようにするためのデータマネジメントのやり方を訓練します。V&V(検証と妥当性)、Risk&Safety(安全性評価)を行った上で研究を進めるやり方を習得できるように繰返し指導します。
  • Engagement(チームワーク、社会への貢献)については、学会発表や学生交流会を積極的に行うだけではなく、アウトリーチ活動や、留学生との交流の機会を積極的に作ります。それにより、自身の研究を人に伝えたり、英語でのコミュニケーションを自信持ってできるようになるための機会をなるべく多く作り、体験してもらうよう指導しています。

そして、日々の研究活動の延長としてだけでなく、問題解決のシステム化を達成した結果としての学位論文を執筆するため、学生さんには以下の目標をお願いしています。
 
  • 博士課程
    Q1 journal 1本以上の業績を博士論文の参考論文に求め、十分な質保証を目指す。
  • 修士課程
    2年間で3回以上は学会発表を行うことを目指す。その成果を統合して、 Q1 Journal 相当に到達できるような内容を目指す。
  • 学士課程
    卒業までに1回はJSME 北陸信越学術講演会 またはJSMS 生体医療材料学生研究交流会で発表できるような内容に到達することを目指す。

厳しい目標のように見えるかもしれませんが、これまでにほとんどの学生さんの修論は、私が英文化して内容を推敲し、そして共著により査読付き英語論文に掲載されています。学部生の卒論でも、考察などを強化することで、英語論文になっています。そして、その成果は、学生さんの学会などでの受賞という形で、きちんと評価されています。
標準的な日程については、再掲載します。

学士課程


修士課程
 

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